「大学院入試と研究の基礎」の特集第一弾は「研究計画書の書き方」についてです。
まずは研究の第一歩である研究テーマの決め方について紹介していきましょう。
研究計画書を書こう
前回紹介したように大学院入試ではどの試験項目も重要なのですが、特に研究計画書は大学院において研究できるかどうかを判断する直接的な材料になります。
しかも、その場で即興的に解答するものではなく、前もって準備できる性質のものですから、今日からでも研究計画書の執筆する用意を始めましょう。
もちろん絶対こうすべきというものはないのですが、研究計画書執筆までの手順は以下のようになることが多いです。
興味のある分野の先行研究を複数読む
並行して先行研究に関連する資料を読む
批判的に読むことで、疑問点や着目されていない観点を発見する
資料から得られた情報を元に新たな仮説を立てる
執筆を始める
これはあくまで一例ですが、執筆開始までにかなりの蓄積と準備が必要なことは覚悟しておきましょう。
これまでの蓄積なしに新しいアイディアは出てきません。
興味のある分野の先行研究を読んでみよう
まずは、自分が関心ある分野の先行研究を読んでみましょう。
日本語の論文はCiNii(サイニー)と呼ばれる論文検索サイトを利用することが一般的です。
ただ漠然と読んでいてもいけません。
読み進めていくなかで自分の関心のあるトピックや事例を絞り、先行研究においてまだ解き明かされていない点や、疑問が残る評価を発見しましょう。
この時、研究の内容が妥当かどうか資料と突き合わせながら検討しましょう。
資料の探し方は様々ありますが、はじめは論文の末尾にある注(註)や参考文献を利用して、根拠となる情報がどこにあるかを探すのがおすすめです。
しばしば修士新学生には「先行研究をまとめれば修士論文になる」という誤解があります。
しかし、それならば読者はそれぞれの論文を読めば事足ります。
たとえ先行研究にあるデータを集めて使ったとしても、分析することで新しい見解を提示できなければなりません。
研究にはたえず独自性・新奇性が求められています。
そのテーマは研究になり得るか?
先行研究やや資料を入念に検討した結果、実現可能な研究テーマや研究目的を決定することが理想です。
しかし、研究に熟練していない学生にとってこれは意外と難しいことです。
特に、「このテーマは先行研究がまだやってない」という理由だけで安易に飛びつくことがよくありますが、これは非常に危険です。
現在まで数え切れないほどの研究者が膨大な研究を蓄積してきたにもかかわらず、なぜこの研究テーマがないのでしょうか。
もちろん最新の時事動向にかかわる研究は少なくて当然ですが、多くの場合そのテーマの研究がないのには理由があります。
その理由は大きく分けて二つあります。
研究成果に意味がない
研究計画書や論文においては研究成果の意義を説明しなければなりません。
もし先行研究と同じ結論になってしまうことが予想されるのならば、その事例を検討する意味はなんなのでしょうか。
類似・近接する分野の先行研究の文脈上、この研究はどういう位置付けなのかを示す必要があるでしょう。
研究は、「個人的に興味を持ったから」やるだけではなく、普遍的にどのような意義があるのか、研究史や社会状況の文脈から説明することが求められます。
それゆえ、この説明が困難であるテーマは先行研究で避けられているのです。
その研究をするための資料がない
たとえ研究の意義が説明できたとしても、研究にはもう一つの壁が存在します。
それは根拠となる資料の存在です。
これがなければ、すべては妄想に過ぎません。
歴史・政治系の研究の場合、対象国の政治状況によっては公文書の公開が大幅に制限されている場合があります。
論証・実証に不可欠な資料の存在をしっかり確認したうえで研究テーマを決めましょう。
次回は「安易な比較を避けよう」というタイトルで、研究テーマを決める際の注意点について説明します。
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